会社を作るときや、代表取締役に就任するとき、原則として代表取締役の住所は登記されます。
そして会社の登記簿は、誰でも取得することができます。
そのため、代表取締役の個人の住所が会社の登記簿謄本に表示されることに、不安を感じる方もいらっしゃると思います。
このような声を受けて、令和6年から、一定の要件を満たす場合に、代表取締役などの住所の一部を登記事項証明書等に表示しない制度が始まりました。
この制度を 「代表取締役等住所非表示措置」 といいます。
代表取締役等住所非表示措置とは?
代表取締役等住所非表示措置とは、株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人の住所について、一定の要件を満たす場合に、登記事項証明書や登記情報提供サービスなどに 住所の一部を表示しない ことができる制度です。
非表示措置がされると、登記事項証明書等には、住所が 最小行政区画まで 表示されます。
たとえば、札幌市の場合は指定都市ですので、区まで表示される扱いになります。法務省の説明では、市区町村まで、東京都は特別区まで、指定都市は区まで記載されるとされています。
つまり、イメージとしては次のような形です。
非表示措置がない場合
北海道札幌市中央区〇条〇丁目〇番〇号
非表示措置がある場合
北海道札幌市中央区
このように、番地や建物名など、より具体的な部分が登記事項証明書等に表示されなくなります。
誰でも利用できる制度?
この制度は、すべての会社や法人で使えるわけではありません。
現在の制度で対象となるのは、基本的に 株式会社の代表取締役等 です。
そのため、✖合同会社の代表社員や、✖一般社団法人の代表理事などについては、現行制度では同じように利用できるとは限りません。
会社の種類によって扱いが異なるため、利用できるかどうかは事前に確認が必要です。
いつ申し出ることができる?
代表取締役等住所非表示措置は、単独でいつでも申し出られる制度ではありません。
法務省は、申出ができる場面について、設立登記、代表取締役等の就任登記、代表取締役等の住所移転による変更登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限ると説明しています。
たとえば、次のような場面です。
| 場面 | 住所非表示の申出 |
|---|---|
| 株式会社を設立するとき | 申出できる場合があります |
| 代表取締役に就任するとき | 申出できる場合があります |
| 代表取締役の住所変更登記をするとき | 申出できる場合があります |
| 住所に変更がない重任登記 | 申出できる場合があります |
| 何の登記申請もないとき | 原則として申出できません |
「もう登記簿に住所が出ているから、今すぐ住所だけ非表示にしたい」という場合でも、現行制度では、原則として住所が登記される登記申請と同時に行う必要があります。
注意点1:住所変更登記の義務がなくなるわけではない
住所非表示措置をした場合でも、代表取締役の住所変更登記が不要になるわけではありません。
代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法に規定する登記義務が免除されるわけではなく、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記申請が必要であると説明しています。
つまり、登記事項証明書に番地まで表示されていなくても、登記記録上は正確な住所を管理する必要があります。
注意点2:融資や取引で追加書類が必要になることがある
代表取締役等住所非表示措置は、プライバシー保護の面ではメリットがあります。
一方で、非表示措置がされた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明できなくなるため、金融機関から融資を受ける際に不都合が生じたり、不動産取引等で必要書類が増えたりする可能性があります。
たとえば、金融機関や取引先から、代表者個人の住所確認書類を別途求められる可能性があります。
そのため、住所を非表示にしたい場合でも、
「とにかく非表示にすれば安心」
というより、今後の融資、契約、不動産取引などに影響がないかを考えたうえで判断することが大切です。
注意点3:官公署などには住所情報が提供されることがある
住所非表示措置がされた場合でも、住所情報が完全に誰にも見えなくなるわけではありません。
法務省は、代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、官公署からの請求等に応じ、対象となった住所の情報を提供することがあると説明しています。
つまり、一般の登記事項証明書等では一部非表示になりますが、法的な必要がある場面では、住所情報が確認されることがあります。
非表示措置はずっと続く?
住所が変わらず、同じ住所を登記する場合には、原則として非表示措置は継続されます。
たとえば、住所変更がない重任登記や、管轄外本店移転の新本店所在地での登記などが例として挙げられています。
ただし、代表取締役の住所が変わる場合には注意が必要です。
住所に変更がある登記を申請する場合には、改めて代表取締役等住所非表示措置の申出が必要であり、申出をしないまま住所変更登記をすると、新しく登記される住所については非表示措置が講じられません。
つまり、一度非表示にしたからといって、将来の住所変更後も自動的にずっと非表示になるわけではありません。
こんな方は検討してもよい制度です
代表取締役等住所非表示措置は、特に次のような方にとって検討する価値があります。
| 検討したいケース | 理由 |
|---|---|
| 自宅を本店所在地とは別にしているが、代表者住所が自宅である場合 | 個人の生活場所が公開されることへの不安を減らせるため |
| 女性の起業家、ひとり会社の代表者 | プライバシーや安全面への配慮が必要な場合があるため |
| 自宅住所を広く公開したくない方 | 登記事項証明書等で番地まで表示されることを避けられるため |
| 会社設立時から制度を利用したい方 | 設立登記と同時に検討できるため |
ただし、融資や取引の予定がある場合には、金融機関や取引先から追加資料を求められる可能性もあります。
メリットだけでなく、実務上の影響も確認したうえで判断することが大切です。


コメント