遺贈とは?

相続

「遺贈」とは、遺言によって、自分の財産の全部または一部をを特定の人や団体に渡すことをいいます。

たとえば、

「自宅を長男に遺贈する」
「預貯金の一部をお世話になった人に遺贈する」
「財産の半分を〇〇さんに遺贈する」

といった形です。

遺贈は、相続人に対してすることもできますし、相続人ではない人に対してすることもできます。法人や団体に財産を残す内容にすることもあります。


遺贈の主な種類

遺贈には、いくつかの種類があります。

種類内容
特定遺贈特定の財産を指定して渡す自宅をAさんに遺贈する」
包括遺贈財産の全部または割合で渡す「財産の2分の1をBさんに遺贈する」
負担付遺贈財産を渡す代わりに義務を負わせる「自宅を遺贈する代わりに妻の生活費を支払う
条件付遺贈条件が成就したら効力が生じる、または消える「大学を卒業したら遺贈する」
期限付遺贈一定の時期に効力が生じる、または消える「〇年〇月から効力を生じる」
補充遺贈受遺者が先に亡くなった場合などに備える「Aが先に死亡していたらBに遺贈する」
後継ぎ遺贈一度Aに渡し、その後Bに渡したいという内容「妻の死亡後は甥に承継させたい」

1. 特定遺贈とは

特定遺贈とは、遺言書の中で「この財産をこの人に渡す」と、財産を具体的に指定する遺贈です。

たとえば、

「札幌市〇〇区〇番の土地を長女に遺贈する」
「ゆうちょ銀行の預金を妹に遺贈する」
「所有する車を甥に遺贈する」

というような内容です。

特定遺贈は、対象となる財産がはっきりしているため、遺言書を読む人にも比較的わかりやすい方法です。

ただし、不動産を遺贈する場合には、登記手続きが必要になります。
また、財産の表示があいまいだと、どの財産を指しているのか争いになることがあります。

たとえば「自宅を遺贈する」と書く場合でも、土地と建物の両方なのか、建物だけなのか、敷地も含むのかなどを明確にしておくことが大切です。


2. 包括遺贈とは

包括遺贈とは、財産を個別に指定するのではなく、「全部」や「割合」で渡す遺贈です。

たとえば、

「全財産をAさんに遺贈する」
「遺産の2分の1をBさんに遺贈する」
「財産の3分の1を〇〇法人に遺贈する」

というような内容です。

包括遺贈を受ける人を「包括受遺者」といいます。
包括受遺者は、相続人と同じような権利義務を持つとされています。

ここで注意したいのは、包括遺贈の場合、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も関係してくる可能性があることです。

そのため、単に「たくさん渡せるから便利」と考えるのではなく、財産全体の内容や債務の有無も確認したうえで検討する必要があります。


3. 特定遺贈と包括遺贈の違い

特定遺贈と包括遺贈の違いは、簡単にいうと「財産を個別に指定するか、割合で指定するか」です。

比較項目特定遺贈包括遺贈
指定の仕方財産を具体的に指定する財産全体や割合で指定する
この土地をAに遺贈する」財産の2分の1をAに遺贈する」
わかりやすさ対象財産が明確ならわかりやすい財産全体の確認が必要
注意点財産の表示を正確にする必要がある債務も関係する可能性がある

実務上は、
「この不動産だけ渡したい」なら特定遺贈、
「財産全体の一定割合を渡したい」なら包括遺贈、
というイメージで考えるとわかりやすいです。


4. 負担付遺贈とは

負担付遺贈とは、財産を渡す代わりに、受け取る人に一定の義務を負わせる遺贈です。

たとえば、

「自宅を長男に遺贈する。ただし、長男は母の生活費として毎月〇万円を支払うこと
「預貯金をAさんに遺贈する。ただし、Aさんはペットの世話をすること
「土地をBさんに遺贈する。ただし、Bさんはお墓の管理をすること

というような内容です。

民法では、負担付遺贈を受けた人は、遺贈の目的の価額を超えない範囲で義務を負うとされています。

負担付遺贈を使うと、遺言者の希望をより具体的に残すことができます。

ただし、
「面倒を見ること」
「大切に管理すること」
「できるだけ支援すること」
のような表現だけでは、内容があいまいになりがちです。

後日のトラブルを防ぐためには、誰が、誰に対して、何を、いつまで、どの程度行うのかを、できるだけ具体的に書くことが大切です。


5. 条件付遺贈とは

条件付遺贈とは、ある条件が成就した場合に、遺贈の効力が発生したり、消滅したりするものです。

たとえば、

「Aが大学を卒業したら、預金〇万円を遺贈する」
「Bが自宅に住み続けることを条件として、不動産を遺贈する」

というような内容です。


6. 補充遺贈とは

補充遺贈とは、最初に指定した受遺者が遺言者より先に亡くなった場合や、遺贈を放棄した場合に備えて、次の受取人を指定しておくものです。

たとえば、

「Aに遺贈する。ただし、Aが遺言者より先に死亡していた場合は、Bに遺贈する」

というような内容です。

遺言書を作るときには、受遺者が必ず自分より長生きするとは限りません。

そのため、特に大切な財産については、
「もしAさんが先に亡くなっていたらどうするか」
まで考えておくと、遺言者の希望を実現しやすくなります。


遺贈を考えるときの注意点

1. 財産の表示を明確にする

不動産、預貯金、株式などを遺贈する場合は、どの財産を指しているのかがわかるように書く必要があります。

「自宅」
「預金」
「土地」

だけでは、内容があいまいになることがあります。

2. 包括遺贈は債務にも注意する

包括遺贈では、財産の全部や割合を受けることになります。
そのため、借金などのマイナスの財産がある場合には注意が必要です。

3. 負担や条件は具体的に書く

負担付遺贈や条件付遺贈では、内容があいまいだと争いになりやすくなります。

「面倒を見る」
「きちんと管理する」
「生活を支える」

という表現だけでは、どこまで義務があるのか判断しにくい場合があります。

4. 遺留分にも配慮する

遺言によって特定の人に多くの財産を渡す場合、一定の相続人の遺留分に配慮する必要があります。遺留分を侵害する遺贈がある場合、遺留分権利者は金銭の支払いを請求できることがあります。

「全財産を長男に遺贈する」
「相続人ではない人に財産の大部分を遺贈する」

といった内容にする場合は、特に注意が必要です。


まとめ

遺贈には、以下以外にも、さまざまな種類があります。

シンプルに特定の財産を渡したい場合は、特定遺贈。
財産全体の割合で渡したい場合は、包括遺贈。
財産を渡す代わりに義務を負わせたい場合は、負担付遺贈。
将来の事情に応じて効力を変えたい場合は、条件付遺贈や期限付遺贈。
受遺者が先に亡くなった場合に備えるなら、補充遺贈。

このように、遺贈の種類によって、向いている場面や注意点が異なります。

遺言書は、残された家族や関係者が読むものです。
そのため、遺言者の気持ちだけでなく、読んだ人が迷わない書き方にすることが大切です。

遺贈を含む遺言書を作成するときは、財産の内容、相続人の関係、遺留分、登記手続きなども含めて、慎重に検討しましょう。

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