パソコンやスマホで遺言書が作れる時代になるの?
最近、「デジタル遺言」という言葉を聞く機会が増えてきました。
「手書きではなく、パソコンで遺言書を作れるの?」
「公証役場に行かなくても、オンラインで遺言ができるの?」
このように気になっている方も多いと思います。
結論からいうと、現時点で“すべてをスマホやパソコンだけで完結できる遺言制度”が一般的に認められているわけではありません。
ただし、遺言に関する手続きのデジタル化は少しずつ進んでいます。特に、公正証書遺言の作成手続きのデジタル化や、法務局の自筆証書遺言書保管制度の一部オンライン手続きが始まっています。
そもそも遺言にはどんな種類がある?
一般的に利用される遺言には、主に次の2つがあります。
1つ目は、自筆証書遺言です。
これは、本人が自分で書いて作る遺言です。
2つ目は、公正証書遺言です。
これは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。
遺言は法律で厳格な方式が定められており、その方式に従わない遺言は無効となるとされています。
「デジタル遺言」といっても、意味がいくつかあります
「デジタル遺言」という言葉は、少し注意が必要です。
一般の方がイメージする「デジタル遺言」は、たとえば次のようなものかもしれません。
「パソコンで遺言書を書いて、PDFで保存しておく」
「スマホのメモアプリに財産の分け方を書いておく」
「動画や音声で、自分の希望を残しておく」
しかし、現在の法律上、これらがそのまま正式な遺言として有効になるわけではありません。日本公証人連合会は、遺言は法律によって厳格な方式が定められており、録音や録画をしておいても、それだけでは法律上の遺言としての効力はありません。
現在、「デジタル遺言」と呼ばれるものには、大きく分けると次の3つです。
① 公正証書遺言の作成手続きのデジタル化
まず大きな変化として、公正証書の作成手続きがデジタル化されています。
日本公証人連合会は、2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されることを公表しています。主な内容として、ウェブ会議の利用、電子データでの作成などです。
つまり、これまでのように「必ず公証役場へ行かなければならない」という形から、一定の場合には、オンラインで公証人とやり取りする方法も利用できるようになってきています。
ただし、誰でも必ず自宅だけで公正証書遺言を作れるという意味ではありません。公正証書遺言では、本人確認、意思確認、証人の立会いなどが重要です。公証人が相当と認める場合には、公証役場に行かずにウェブ会議で公証人と面談する方法で公正証書を作成することも可能とされています。
② 公正証書遺言は「電子データの原本」へ
公正証書遺言については、作成手続きだけでなく、原本の管理にもデジタル化の流れがあります。
これまでのような紙の書類だけでなく、電子データとして作成・保管される仕組みが始まっています。
電子データで作られた公正証書遺言の原本は、日本公証人連合会が管理する専用のシステムで保管され、災害などに備えて、データを守るためのバックアップの仕組みも用意されています。
公正証書遺言の大きなメリットは、もともと公証役場で原本が保管されるため、紛失や改ざんのリスクが低いことです。デジタル化により、その保管・管理の仕組みも電子的なものへ進んでいます。
③ 自筆証書遺言は、今も原則「手書き」が必要
一方で、自分で作る自筆証書遺言については注意が必要です。
自筆証書遺言は、遺言書の全文、作成日付、氏名を本人が自書し、押印する必要があります。財産目録については、パソコンで作成したり、登記事項証明書や通帳のコピーを添付したりすることができますが、その場合でも各ページに署名押印が必要です。
つまり、現時点では、本文まで全部パソコンで作成した自筆証書遺言は、原則として自筆証書遺言としての要件を満たしません。
「デジタル遺言」と聞くと、パソコンで本文を打てばよいと思ってしまいがちですが、ここは誤解しやすいポイントです。
デジタル化されても、遺言で大切なことは変わりません
遺言の手続きがデジタル化されても、大切なポイントは変わりません。
それは、本人の意思がはっきりしていること、法律上有効な形で作ること、相続手続きで使える内容になっていることです。
たとえば、次のような点はとても大切です。
誰に、どの財産を渡すのか。
不動産は正確に特定できているか。
預貯金や株式などの財産が分かるようになっているか。
遺言執行者を定める必要があるか。
相続人の遺留分に配慮する必要があるか。
特に不動産がある場合は、登記手続きまで見据えて、物件の表示や承継させる相手を正確に書くことが大切です。
まとめ
「デジタル遺言」という言葉を聞くと、スマホやパソコンだけで簡単に遺言書を作れるように感じるかもしれません。
しかし、現在の制度では、すべての遺言が完全にデジタル化されているわけではありません。
公正証書遺言については、公正証書の作成手続きのデジタル化が進み、ウェブ会議を利用できる場合も出てきました。一方で、自筆証書遺言については、今も本文は原則として本人の手書きが必要です。
遺言は、ご自身の大切な財産を、将来どのように引き継いでもらうかを決める大切な書類です。
「デジタルでできるのか」だけでなく、
「自分の場合はどの方式が合っているのか」
「相続手続きで困らない内容になっているか」
を確認しながら、慎重に準備することをおすすめします。


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